文書作成日:2023/06/05
保険料贈与の活用

保険料贈与を活用するにあたっての注意点を教えてください。

Q
今月のご相談

 私の財産総額は約10億円です。相続対策として子(社会人)に対する現金贈与を検討していましたが、贈与したお金が有効に活用されないことを懸念し、なかなか実行に踏み切れない状況です。
 こうした状況で、金融機関に紹介されたコンサルタントから保険料贈与の提案を受けました。贈与する資金の使途を明確にでき、相続発生時は死亡保険金を納税資金として活用できる点でも有効と説明を受けました。贈与金額(保険料相当額)は相続税率や贈与税率などを考慮の上、以下の提案をいただいています。提案内容について注意事項等があれば教えてください。

【提案内容】
  • 契約者、死亡保険金受取人:子
  • 被保険者:私
  • 保険種類:終身保険
  • 保険金額:3,000万円
  • 年間保険料:250万円(10年払込)
A-1
ワンポイントアドバイス

 今回の提案内容の場合、贈与する資金の使途を明確にすることができるため、資金の使い込み防止にも有効と思われます。ただし、元本割れの可能性など留意すべき点がいくつかありますのでご注意ください。

A-2
詳細解説

 ご相談の提案内容は、コンサルタントからの説明のとおり、毎年相談者様からお子様に保険料相当額を贈与し、お子様が契約者として保険料を支払います。相談者様が亡くなった時は、お子様が死亡保険金を受け取り、支払われた死亡保険金を納税資金として活用することができます。また贈与された資金の使途が明確になるため、懸念されている資金の使い込み防止にも有効です。

保険料贈与を活用する際の注意点

 保険料贈与を活用する際の注意点は、以下のとおりです。

(1)元本割れの可能性

 解約をする場合の意思決定者は契約者(お子様)となります。保険料払込期間中に途中解約をした場合は、元本割れとなる可能性があります。保険料贈与を行う目的、途中解約時のリスクを、契約者(お子様)自身が正しく認識した上で、手続きを行うようにしましょう。

 また、外貨建て保険や変額保険を活用する場合は、為替変動や運用実績により死亡保険金や解約返戻金の受取金額が変動する点にも注意が必要です。

(2)贈与の事実を明確にする

 贈与の事実が確認できない場合、実質的な保険料負担者が相談者様とみなされる可能性があります。税務調査等により贈与が否認されないよう、下記の点に注意してください。

  • 贈与契約書を毎年作成する
  • 受贈者が贈与を受けたことを認識しており、受贈者自身で贈与財産の管理を行う
    ⇒贈与者は受贈者名義の銀行口座に振り込みを行う
  • 受贈者名義の銀行口座から生命保険料を支払う
  • 保険料贈与で加入した契約の生命保険料控除を、贈与者(相談者様)が受けないこと
(3)死亡保険金に対する課税

 契約者(保険料負担者)、保険金受取人=子、被保険者=相談者様の場合、死亡保険金は相続税ではなく子の所得税(一時所得)の対象となります。

【課税対象】
(受け取った保険金−支払保険料累計額−特別控除50万円)×1/2

 親の財産総額が多いほど、相続税率は高くなります。相続税率と所得税率を比較した場合、一般的には親の財産総額が多く、子の所得が少ないほど、税負担の観点では有効と考えられます。
 ただし、相続税の計算においては、死亡保険金に対する非課税制度があります。この制度の活用がまだであれば、この制度も上手く活用するとよいでしょう。

(4)生前贈与加算(相続財産としての加算)

 ご相談者様の相続開始にあたり、お子様が相続または遺贈により財産を取得した場合、お亡くなりになった日から遡って3年(改正後は7年)間の贈与は相続税の対象となります。この期間内に本件の保険料贈与があれば、相続税の対象となる点に注意してください。

 贈与する保険料の適正額は、親の財産に対する相続税率や贈与する保険料に対する贈与税率、子の所得税率により異なります。相続対策で悩まれた場合には、当事務所までお気軽にお問い合わせください。

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